「Aces of Valor」(Legion Wargames)

 第一次世界大戦西部戦線で、1航空隊(戦闘機8機)を率いて任務をこなしていくソロプレイゲームです。多分Compassの「Western Front Ace」も似たような感じかもしれませんが、そっちは「Interceptor Ace」や「Nightfighter Ace」のように1機1プレイヤーでしょう。むしろGMTの「Skies Above the Reich」の方が近いかも。デザイナーはErik von Rossingさん。ドイツ人でしょうか。

 期間(Tier)は、大戦初期(Tier 1)から大戦後期(Tier 3)の3つに分かれ、ドイツ軍、イギリス軍、フランス軍アメリカ軍の4勢力が出てきます。大戦初期でアメリカ軍がいるのはどうかと思いますが、義勇軍扱いでしょうか。プレイヤーが扱える機体は期間によって異なります。後ろの期間の機体は使えません。各国各期間で16機分のパイロットがいて、ランダムで8人選びます。パイロット名は各期間同じですので、キャンペーンで新しい機体を受領した場合は、対応するパイロットのユニットを使います。

 登場する機体は、ドイツ軍はTier 1がD.III、Tier 2がDr.1、Tier 3がD.VII、イギリス軍はPup、Camel、Dolphin、フランス軍がNieuport 17、Spad VII、Spad XIII、アメリカ軍がNieuport 17、Nieuport 28、Spad XIIIです。この他、それぞれの国に爆撃機、重爆撃機偵察機があります。プレイヤーが指揮できるのは戦闘機隊ですが、これらの機体を護衛する任務の場合に登場し、プレイヤーが爆撃とか写真撮影の処理を行います。

 このゲームは、協商側、同盟側どちらもプレイ可能です。任務はカードを引きますが、両方の陣営とも同じカードを使います。任務の際に出現する敵はランダムに引きますが、それを任意にすることで対戦プレイもできるのではないかと思います。それぞれが交互に任務カードを引いてプレイしていくようにすればいいかと。2飛行隊分のユニットがありますので、攻撃用と防御用の2個飛行隊を設定するとかすると面白いかもしれません。

 それはさておき。

 マップ全体です。

Aces of Valorのマップ

 キャンペーンマップ上にプレイヤーの基地飛行場を設定し、そこから目標まで1マスずつ任務飛行を行います。基本的には1任務24ターンで帰還までするので、12マス先まで行けます(斜めは不可)。余れば目標上空で数ターン過ごすことも可能です。写真撮影の場合などではターンを過ごすことで成功率や取得MP(ミッションポイント)が増えたりします。マスの右下や左下にあるのは対空機銃で、そのマスに入ると撃たれます。機体が損傷したら帰還しないといけなくなるかもしれません。

キャンペーンマップ(注:飛行場の配置位置が右にズレていた)

 任務には爆撃機偵察機の護衛、地上攻撃(機銃掃射)、哨戒、気球撃破、砲兵観測などがあり、特殊なものとしてはスクランブル(敵の方がやってくる)というものもあります。目標も敵の飛行場や気球の他、歩兵、砲兵、戦車といった部隊、都市、補給所、鉄道、敵司令部などがあり、それぞれ貰えるMPが異なります。MPはVPに換算するだけではなく、損傷機体の修理や補充などにも使います。

 

 では、試しにプレイしてみましょう。ドイツ軍を選びました。キャンペーンの長さを決めます。キャンペーンターン(ミッションターンと異なる)は8、12、16ターンから選びます。4ターン毎に基地飛行場が変更になる可能性があります。最初なので8ターン。期間はサイコロを振ったら大戦初期(Tier 1)でした。自分で決めてもかまいません。ドイツ軍なので、D.IIIです。16ユニットからランダムで8ユニットを選びました。機体性能はどれも同じですが、パイロット技能が異なります。もっとも技能が高いManfredさん(フォン・リヒトホーフェン?)や2番目に高いErnstさん(フォン・アイゼナッハ?パチン、パチン)はいらっしゃいませんでした。戦闘マップのReadyボックス(緑)に置きます。

我が忠勇なるドイツ軍兵士諸君

 性能値とパイロット技能(対空)は空中戦時のイニシアチブに関係します。イニシアチブが優位だと一方的に命中判定のダイスを、イニシアチブ値の差の分だけ2~5個振れます。

 ちょっと余談ですが、このゲームにはダイスが4個しか入っていません。爆撃の場合ですと6個のダイスが必要です。足りません。今回は不足分は自分のダイスを使いました。昔、何かで読んだのですが、鈴木大佐が「ダイス1個で購買者を裏切るのか」と怒ったとか。Legionに聞かせたいものです。

 機銃値は攻撃に関係し、パイロット技能で修正後のダイスが左側(D.IIIなら4)以上で1ヒット、右側(D.IIIなら6)以上で2ヒットとなります。これは命中判定で、次に、1ヒット以上をDRMとして再度損害判定のダイス1個を振ります。4ヒットなら1D6+3で敵機の構造値より(以上ではない)1~2大きければ損傷、3以上なら撃破できます。慣れれば結構簡単です。

 

 プレイは、任務カードを引いて目標を決め、対応する戦闘機を選び(全機出撃はあまりない)、キャンペーンマップ上で移動しつつイベント(敵の対空砲火とか)をこなして目標のマスに行き、敵の戦闘機の迎撃とかをかいくぐって任務を達成し(ミッションポイントが貰えます)、基地飛行場に帰還します。損傷を受けると途中で墜落したり、別の飛行場に降りたりします。任務が無理っぽかったら放棄して帰ってくることもできますが、ポイントが貰えず(場合によっては引かれる)キャンペーンターンが進んでしまいます。設定したキャンペーンターンを過ごしたらゲームが終了です。得たVP(MPではない)で戦略的勝利から戦略的敗北まで6段階の勝敗が決定します。

 

 さて、最初の任務カードを引いてみました。スクランブル・・・。いきなり奇襲を受けます。

基地飛行場が奇襲を受け、スクランブル発進

 まず、天候を決めます。ドン曇りでした(Heavy Clouds)。ただし爆撃任務には関係ありません。次に爆撃目標の基地飛行場を戦闘マップに配置します。イニシアチブ値2固定です。イニシアチブ値の差が爆撃時の命中判定に関係します。

 迎撃する機体の数の判定では4機でした。この時のダイスは1D3+2です。3面ダイスは入っていません。なので6面を振って1-2が1、3-4が2、5-6が3です。ちなみに1D2という指定もあって、別にコイントスするわけではなく1D6で1-3が1、4-6が2とします。ルールに書いてあります。

 友軍機はパイロット技能が高いのを選びます。後から追加で上がってくる機体もあります。

 そして、敵機ですが、相手国籍は任意に選べます(ダイスを振ってランダムに決めるのもあり)。基地飛行場がマップ右上なので、多分イギリス軍戦区だろうと思ってイギリス軍にしました。期間が大戦初期(Tier 1)なのでイギリス軍はPupです。1D3+1を振って護衛戦闘機数を決めます。爆撃機は2機固定です。今回の判定ではイギリス軍の編隊はPup2機、爆撃機(DH-4)が2機となりました。

 次にイニシアチブを決めます。普通の任務ですと発見(会敵)判定がありますが、スクランブルではありません。

 イニシアチブは1D6+機体の性能値+パイロット技能(空戦)+発見判定時のDRMです。機体ごとに振ります。以下のような結果になりました。

イニシアチブトラック上の配置

 友軍機がイニシアチブ13、11、10、9にいます。攻撃は、イニシアチブ値が自分「より」下で、かつ最も近い敵機に対してしかできません。敵機が同じイニシアチブ値にいるなら選べます。今回の場合、イニシアチブ値13、11の友軍機はイニシアチブ値10の敵戦闘機しか攻撃できません。頭ごなしに敵爆撃機を攻撃できないのです。一方、イニシアチブ値10の友軍機はイニシアチブ値10の敵戦闘機を攻撃できません。攻撃できるのはイニシアチブ値7の敵爆撃機のみです。

 ちょっとわかりにくいかもしれませんが、イニシアチブ値を高度と考えるといいかもしれません。同じ高度の場合、攻撃しても弾道が下に下がるので(第一次大戦時の飛行機ですから)攻撃できない。また、敵機が間にある場合には、その下の敵機を攻撃できない(ブロックされる)。実際には違うでしょうが、まあそんな感じ。

 

 さて、戦闘についてですが、戦闘ラウンドは3ラウンド固定です。爆撃するラウンドは1D3で決めます。6が出たので第3ラウンドに爆撃が行われます。それまでに爆撃機に損傷を与えたり撃墜したりすれば基地飛行場は守られます。

 戦闘の処理はイニシアチブ値が高い順に行っていきます。最初は13にいるErickさんです。敵戦闘機とのイニシアチブの差が3ですので、3個ダイスを振れます。パイロット技能が1ですので、機銃値(4/6)に対して3-4が出れば1ヒット、5-6で2ヒットになります。ていや!6、5、6。優秀。2ヒット×3で6ヒットです。

Erichの攻撃

 損傷判定は1D+5(6ヒット-1)で、4が出たので9ダメージ。Pupの構造値5よりも3以上大きいので撃墜です。Henry討取ったり! Pupを下のDestroyedボックスに移動します。またErichさんは行動済みなので下のAction Takenボックスに移動します。

Henry撃墜

 次はイニシアチブ値が11のWernerさんです。同様にイニシアチブ値10のJohnを攻撃しますが、イニシアチブ値の差が1なので振れるダイスは2個です。結果、被害なし。

 そしてイニシアチブ値10ですが、どちらから攻撃してもかまいません。どのみち同じイニシアチブ値の敵には攻撃できませんので。友軍機(Josef)はイニシアチブ値7にいる敵爆撃機を、敵戦闘機(John)はイニシアチブ値9にいるOttoを攻撃することになります。

 爆撃機に対する攻撃の場合、後部機銃で撃たれます。ダメージは同時適用です。判定自体は同じですが、振れるダイスの数が異なります。いずれもダメージ無し。

 その後、爆撃機の番になりましたが、爆撃自体は第3ラウンドで行われるので、特に何もやることはりません。

 

 ラウンドが進んで第3ラウンド、爆撃機の番が来ました。下の写真ではちょっとわきによけちゃいましたが、敵爆撃機はイニシアチブ値8と5にいます。両方とも健在です。友軍戦闘機で敵爆撃機を攻撃するのですが、構造値7は結構固いです。1ヒットでは1D6で8以上出ません。出すためには1D6で6を出したうえでDRM+2以上が必要です。つまり最低限3ヒットは与えていないといけないのです。確率を上げるためには、イニシアチブ値の差で振れる命中判定のダイスを多くする必要があります。今回はダメージは与えられませんでした。

 さて爆撃です。その前に基地飛行場からの対空砲火があります。下の数値の一番左(5)個のダイスを振って6が出れば1ヒットです。足りないダイスは自分ので追加(赤いダイス)して振りました。2ヒット。上記の通り2ヒットではダメージを与えられません。

対空砲火(ダメージなし)

 爆撃機は6発の爆弾を持っており、これが振れるダイス数です。ダメージを与えていると3発に減ります。まずは命中判定。足りないダイスを追加します(透明のダイス)。イニシアチブ値の差が6なので4以上で命中ですが、この機体には対地スキル1がありますので3以上で命中です。ボン、ボン、ボン!全弾命中・・・。太平洋戦争初期の日本軍か!名無し爆撃機のくせに優秀な。

敵の爆撃(全弾命中)

 次にダメージ判定です。ヒット数だけ1D6して、爆撃の場合は出目の合計です。ドーン、ドーン!まじか・・・。

基地飛行場の損傷(裏返す)

基地飛行場の壊滅


 裏側の構造値16ですが、ダメージが23も残っているので破壊されます。MPは10(右上)がマイナスされます。

 MPはキャンペーンターンをまたいで持ち越されません。今回は基地飛行場破壊-10と敵戦闘機撃墜の+1で-9です。(追記)よく見たら味方飛行場の破壊のMPはありませんでした。(さらに追記)任務カードに目標に対するダメージって書いてありましたので-31MP?

 ちなみに基地飛行場が破壊された時のルールは書かれていません。基地移動は4ターン毎ですが、それまで任務不可なのでしょうか。それとも別の飛行場に移動するのでしょうか。まあ、現実的に考えると、基地に残っていた友軍機は破壊され、空中にいた友軍機は近場の飛行場に降りたのでしょう。今回は運よく全機上がっていました。基地を南のB飛行場に移動して続ければいいのかもしれません。

 

 このゲームは小さなウォーゲーム屋さんで購入しました。日本語ルールブック付きです。前に購入した「Captain's Sea」の時はデザイナーズノートが訳されていませんでしたが、今回は訳されていました。デザイナーズノートはデザイナーの思考を見ることができるので好きなのです。よかった、よかった。だだ、チャートの一部が未訳でした。それは画龍点睛を欠いたなという所でした。

 

 1ミッション30分ぐらいでプレイできます。なので、8キャンペーンターンなら4時間といったところでしょうか。慣れればもう少し速いかもしれません。任務カードは30枚あり、またオプションルールで任務を行った後のイベント処理も行えます(配転とか決闘とか)。1日ごとにミッションを行っていく「Interceptor Ace」(毎日が出撃日)とは違い、特にキャンペーンターンの長さが決まっているわけではないので、いかにも第一次大戦っぽいのんびりした感じが出ていると思います。多分売れたら追加の機体が出るんじゃないかな。その時はダイスももっと増やしてほしい。