「山本五十六撃墜作戦」(ダン・ハンプトン/沼尻勲)

 海軍甲事件、アメリカ側の名称ではオペレーション・ベンジェンスについての本ですが、当の事件に関しては研究書というよりは歴史小説という感じです。

 全体構成としては、各章の冒頭で4月17日当日の動きを小説的に書いていて、その後に山本五十六とレックス・バーバーの生い立ちや、ガダルカナル島をめぐる陸海の戦闘について詳述しています。なかなか面白かった。

 筆調としては、アメリカ側から見ているので、山本五十六暗殺について、これによってアメリが兵の犠牲が減った可能性が高いと正当化しています。まあ、原爆の正当化と同じですね。個人的には戦争なんだから勝つためには何でもありなので正当化の必要はないと思っています。正当化したいのは、心の奥で引け目があるためでしょう。でも、戦争犯罪を正当化するのは危険だと思います。

 山本五十六暗殺については、トム・ランフィアが単独撃墜したと吹聴していますが、これは不可能と反証しています。私もそうだろうなという気がしました。ランフィアは政界進出(もっと言えば大統領就任)を目指していたので、自身の手柄を捏造する傾向があったようです。まあ、こんな奴が大統領にならなくてアメリカも幸せだったことでしょう。

 その他、坂井田洋治による検証報告も添付されています。歴史群像に載っていたかな。2023年でも結構保存されているんですね。聖地巡礼した日本人が機体の一部を持って帰っているような気がしたんですが。

 ところで、今号のCMJはヒトラー暗殺計画です。山本五十六暗殺計画もゲームデザインできないかななどと思ってしまった次第。