清盛軍記(WGJ12号)

 今日は旧暦で7月11日です。1156年のこの日の未明。白川北殿に立て籠もる崇徳上皇方に対して、後白河天皇方の源氏と平氏の軍勢が夜討ちを仕掛けました。いわゆる保元の乱です。
 戦闘は午前4時頃に始まり、午前8時には大勢が決まりました。戦記物の「保元物語」というのがあって、電子書籍で読んだことがあります。なかなか手に汗を握る展開です。特に源鎮西八郎為朝。強弓の名手です。放った矢が鎧武者を貫通して、後ろの武者にも刺さったそうです。当時の鎧は矢が貫通しても着ている人が怪我をしないように隙間があるんですが、それすら意味をなさない。まるでアハト・アハト。
 この保元の乱をちゃんと描いたNHK大河は「平清盛」です。「新平家物語」ももしかしたらあったかもしれませんが、観た事ありません。人形劇の方もどうだったかな。私は「平清盛」は気に入っていてDVD集を買っているのですが、世間的には低視聴率のようです。残念なことです。
 そして、ウォーゲームとしてはウォーゲーム日本史12号の「清盛軍記」のみです。さっそくプレイしてみました。
 このゲームは京都三部作の二作目で、以前に書いた「応仁記」とほぼ同じルールです。なのでプレイはそれほど困難ではありません。ただ、セットアップにちょっと疑問が・・・。
 このゲーム(応仁記も)は京都マップと全国マップの2つがあり、全国マップにいる武将が京都にやってきたり、京都から地元に帰ったりします。ですが、保元の乱は、戦闘が1日(というか4時間)で終了しているのです。全国マップのセットアップいらなくない?まあ、実際に戦闘に参加した大和の源光保源光基はいいでしょう。援軍を送った濃尾の藤原範忠もいいとします。が、実際には戦いに間に合わなかった大和の信実や戦闘に参加したわけではない湯浅宗重とかどうなの。特に坂東の源悪源太義平に至っては絶対間に合わんだろう。ちなみに平治の乱(18日間)で奥羽の藤原秀衡もいらないと思う。なんで入れたのやら。
 そんなわけで、源光保、光基、藤原範忠は入れますが、他のはポイしちゃいました。それでプレイ開始です。
 プレイは交互手順です。最初に主導権を決めますが、シナリオ特別ルールで最初の主導権は崇徳上皇方が取ります。そして先攻か後攻かを決めることができます。史実では、崇徳上皇方と後白河天皇方の双方で夜討ちが進言されました。NHK平清盛」でもこのシーンが出てきます。そして、なかなか興味深いことに、崇徳上皇方の悪左府藤原頼長後白河天皇方の藤原信西入道が同じ孫子の一節を持ち出して、別々の結論に至っています。頼長は皇族の戦で夜討ちなどと言う卑怯な手を使うのはまかりならん、奈良の信実が援軍で来るのを待つとしました。一方信西は夜討ちを支持。結果、白川北殿攻めになります。
 ゲームでも、崇徳上皇方が先攻を取った場合は、頼長が夜討ちを支持したという事になります。後攻を取った場合は史実通り。試しに史実通りにしました。そうすると白川北殿は攻撃された場合に賽の目+3の特典(攻撃ユニットの戦闘力以下の目が出ればヒット)が得られます。つまり攻撃する場合に4以下の戦闘力では出目1のみしかヒットを与えられません。ちなみに後白河天皇方に戦闘力5以上はいません。そう、白川北殿は平安京の旅順要塞と言われることになるだろう。
 これに対抗するために、放火という手があります。白川北殿に接する4ボックスのうち3ボックスに後白河天皇方のユニットがいれば放火できます。史実でもこの放火が大勢を決定しました。とはいえ、放火では-1のみの修正値。ターンの最後の判定で鎮火されたり大火事(修正-2)になったりします。まあ、大火事でも+1の修正が残りますね。
 さらに追い打ちをかけるように源氏側の特典(平地、河原への攻撃-1)と平氏の特典(邸宅からの攻撃-1)があるので、白川北殿(邸宅)に籠る軍勢は強力な攻撃力を誇ります。特に鎮西八郎は戦闘力5なので河原への攻撃は絶対当たります。恐るべし。まさにアハト・アハト。そう、白川北殿は平安京のハルファヤ・パスと呼ばれることになるだろう。
 とはいえ、崇徳上皇方は兵力が少なく、後白河天皇方のユニットが白川北殿を囲んで攻撃しまくることができます。いずれは全滅必死です。ですが、ここでターン終了判定があります。
 このゲームの1ターンは何時間とか言う単位になっていません。応仁記は1ターン1年なのですが。で、どう終了するのかと言えば、保元の乱の場合はターン終了時に1d6振って累計が9を超えると終了。それまでに白川北殿が落ちていなければ崇徳上皇方の勝ち。まあ、ちょっと微妙な勝利条件ですが、3ヶ月かかった平治の乱と合わせてゲームを作るなら仕方が無いのでしょうか。このような状況なので、平均的には3ターンで終了です。
 各ターンの動きは、応仁記と同じように、手番側が1d6振って出目によって動かせる氏族(皇族、藤原氏、源氏、平氏)を決めます。そしてユニット1~5個を1グループとして移動ー戦闘や戦闘ー移動などを行います。ちなみに皇族(崇徳上皇後白河天皇)は移動することはほとんどないでしょうが、特殊効果で調略が行えます。同様に藤原氏は回復が行えます。これは1d6振って出目の数だけ裏返ったユニットを回復できます。藤原氏崇徳上皇方が1ユニット(頼長)、後白河天皇方が2ユニット(と、濃尾の藤原範忠も含まれるのか?)。この回復は結構重要です。
 さて、実際の戦いですが、上記のように動かせる氏族を動かした後で、裏返します。これは戦闘でのステップロスと同じ効果です。なので、行動して裏返したユニットに対して攻撃がヒットすると除去されます。基本的に崇徳上皇方は白川北殿に籠って動かないので、後白河天皇方が白川北殿に隣接しなくてはなりません。攻撃もできますが、上記のように+3修正で思うに任せず。そして行動終了で裏返します。そこへ崇徳上皇方の攻撃がヒットすると・・・除去・・・。迂闊に近づけない・・・。近づいた後でうまく藤原氏の回復が決まればいいんですが、中々。
 なので、第1ターンは白川北殿に隣接せず、次のターンの総攻撃に備えて蝟集します。が、下手すると2ターンでゲーム終了になったりしますので、難しい判断です。
 第2ターンは放火狙いで一気に詰め寄ります。崇徳上皇方に攻撃されますが、攻撃したユニットは裏返るので飽和攻撃できます。ただ、悪左府頼長が回復で6とか出すと絶望感に打ちひしがれます。それと崇徳上皇の調略が効いて武将を引き抜かれても。引き抜かれた武将は敵ユニットがいなければどこでも配置できますが、まあ白川北殿に配置しますよね。ついでに裏返っていても表にして配置できます。
 全部のユニットが行動すればターン終了ではありません。両軍が連続パスした場合にターンが終了します。なのでめったにないですが、両軍の皇族が2回ずつ行動した場合(1回目は調略して裏返り、2回目は行動できないのでパス)、ターンが終了します。すると時間がたって、白川北殿が落ちにくくなるという。
 実際のところ、何回かプレイしてみたのですが、崇徳上皇方が粘り勝ちばかりしています。多分、保元の乱シナリオだけプレイするのではなく、保元・平治の乱のキャンペーンシナリオがデザイナーの意図なのでしょう。でも、保元の乱だけでも面白い。「平清盛」のDVDを観ながらプレイするのに最適です(プレイ時間的にも)。