『応仁記』(国際通信社)

 もうすぐ旧正月です。旧正月と言えば思い出すのが「上御霊社の戦い」です。寒い時期によくもまあ戦ったよなと、昔大河ドラマ花の乱」を見ていて思ったものです。
 そんなわけで、ウォーゲーム日本史の『応仁記』です。このゲームでは、洛中(京都の上京)マップと地方マップ(下京はこっち)があり、シーケンスでは、まず地方マップで東西両軍の戦いを行って、残ったものが上京する可能性があります(地方フェイズ)。次に足軽フェイズで足軽が跳梁跋扈します。最後に洛中マップでの移動・戦闘などを解決します(洛中フェイズ)。
 デザイナーの意図は、「ままならない」。プレイヤーの立場は東西両軍の主将(東軍:細川勝元野村萬斎)、西軍:山名宗全萬屋錦之介))ですが、地方にいる連中を上京させようとしても1/6(1D6で出目1)ぐらいの確率でしか洛中マップに登場しません。1/6で地元滞在、4/6でほかの地方に行ってしまいます(地方ごとに違うので、大雑把な確率です)。両軍主将が、自分の意志で動かせるのは洛中マップにいる連中のみ。ここでの戦闘に負けると地方の自分の領地に戻ってしまいます。そして洛中になかなか帰ってこない。
 また、ままならないのは武将たちだけではありません。「足軽」もままならない。戦国期の「徴募兵」と言う意味での足軽ではなく、「傭兵」と言う意味の足軽です。骨皮道犬(ルー大柴)です。ある意味「悪党」の系譜に連なるような連中です。足軽フェイズでは、下京エリアや寺社エリアにいる武将に「強制的に」くっついてきます。そしてその武将と一緒に移動しますが、次の足軽フェイズでは武将から離れて自分勝手に放火だの狼藉だのを行います。そして消えて行きます(パイルに戻る)。まあ武将にくっついている段階では戦闘の時に損害吸収してくれますが。
 このゲームは、洛中と地方がシーソーの2つの端のようになっています。洛中の戦闘で負けた武将は地方に戻ってしまいます。すると地方の軍勢が強化され、地方の戦闘に勝ち、洛中に再び戻る可能性があります(1/6ぐらいですが)。地方で国人を召集し、軍勢を強化した状態で上洛すれば、洛中の戦闘での勝率も上がります。こんな感じで、洛中における東軍西軍のシーソーゲームと、地方での東西両軍のシーソーゲームが関連し、洛中と地方の力のバランスのシーソーゲームが行われます。よくできています。
 それにしてもシーソーゲームですので、戦いがダラダラと続いた理由もよくわかります。そもそもの原因は義政の朝令暮改と言うか、他人の意見に左右されやすい優柔不断さと言うか。黒澤明が生きていたら「ヘンリー六世」をベースに応仁の乱の映画でも撮っていたかもしれません。タイトルは『シン・乱』。序・破・久の三部作で(ヘンリー六世も三部作)、経緯から初戦までの「序」、乱の拡大から宗全・勝元の突然の死までの「破」、その後もダラダラと続く戦いをダラダラと描く「久」。いいかも。