『Versailles 1919』のソリティアルールについて

 今回は『Versailles1919』(GMT)のソリティアルールについて紹介します。これは結構特殊なルールです。

 通常のソリティアゲームは、陣営が変わることがありません。日本をやったら最後まで日本を、信長をやったら最後まで信長をプレイヤーがコントロールします。

 Versailles1919のソリティアルールでは、プレイする陣営が変わります

 これは、他のゲームでは基本的に2プレイヤーの対戦であるからだと思われます。例えば日本軍対連合軍とか、信長対反信長といった感じです。

 ところが、Versailles1919はマルチプレイゲームであり、かつソリティアでもイギリス、フランス、アメリカの3大国でプレイします。

 通常のゲームでは、ソリティアシステム(大体BOTと呼ばれます)は、プレイヤーとしか戦いませんが、マルチの場合はBOTBOTのシステムが入らないとBOT達が共同でプレイヤーと戦うといったほとんど2プレイヤーのようになります。そこで、Versailles1919では特殊なシステムを考案したのでしょう。

 

 そのシステムですが、Versailles1919では1国ごとにVPが計算されますが、それとは別にプレイヤー自身のVPがあります。これを得るためには、プレイヤーがコントロールする国がターンの初めに最もVPを多く持っている必要があります。このままですと単に勝ち逃げするだけですが、武装蜂起がおこったりして問題が未解決にされた場合、プレイヤーは最もVPが低い国に即座に鞍替えさせられます。武装蜂起はイベントカードが待合室に出た場合に起こりやすいですし、特に地域の不満が高まっているとあっさり武装蜂起されます。つまり、トップを維持ししつつ、地域の不満を抑えるようにプレイしていないと、自身のVPも確保できなくなります。一応、自身のVPが20以上ならばゲームに勝利ということになっていますが、ルールでは「どのあたりが適正なバランスかわからないので、何度かやって適正なVP値を見つけてね」と書いてあります。プレイブックにあったサンプルプレイですと、ゲームが半分終わって3VPでした。

 

 思ったのは、将棋の羽生名人は練習で将棋を打つ時、不利になったら盤を回転させて、不利な方で指すことで棋力をあげたそうです。VPが低い国に替わるというあたり、なんか、そんな感じがします。

 

 BOT自体の行動原理についてはあまり目新しくありません。優先順位が決まっていて、それに合わせて影響力を行使したり議題を解決したりしていきます。

 

 VPが低い国に鞍替えして、その国のVPを上げていき、そして自身のVPを稼ぎ、またVPが低い国に替わって・・・。これは、私が思うに、どの国も可能な限りVPを高くする(このゲームの場合、問題を解決したり国民の幸福度を高いまま維持する)ことを目指してベルサイユ会議を行っていることを示している気がします。どこかの国だけが利益を得たりするのは、大戦後の平和会議という状況にはそぐわないと、デザイナーは言いたいのではないでしょうか。そういう意味では、マルチプレイでも相手の足を引っ張って、自国だけが勝利を目指すというプレイは、第二次世界大戦や現在まで続く紛争を防ぐことができないのでしょう。このゲームを通じて、もしかしたらあったかもしれない平和な世界を築けるかどうかをプレイヤーに試してほしいのではないでしょうか。

 

 さて、デザイナーズノートを読むと(と言っても、和訳のために書き写した時に見ただけですが)どうやら次は『ウィーン1813』らしいです。ナポレオン戦争ですね。これも結構会議が踊ったから楽しそうですね。って、1813?見直しましたが確かに1813です。諸国民戦争の前でしょうか?1814かと思いました。

 このシステムを日本に持ち込んだらどうなるでしょう。でも、日本で有名な「会議」って、清須会議「御前会議」ぐらいしか思い浮かばない・・・。清須会議は、まあ4者(羽柴、柴田、丹羽、池田、追加で滝川がNPC?)の利害があるから形になるかもしれませんが、何しろ期間が短かった。討議内容も後継者と領地ぐらいだったのではないでしょうか。いまいちですね。御前会議はまあねぇ。戦争直前の会議と終戦時の会議と2つやってみるとか?各省の利害が対立するとか?いまいちですね。

 まあ、腹芸と根回しの国ですので、真っ向勝負の「会議」は日本にそぐわないのかもしれません。

 

(追記)

 プレイブックのソリティアのプレイサンプルを和訳したら、プレイヤーの立場は各国の指導者ではなくサウロンだそうです。指輪物語のあのサウロンになって、各国の指導者の耳元で囁いて、世界を恐怖と不安に陥れるのだとか。だから、操る国を変えるのだそうです。