「戦争の経済学」(ポール・ポースト/山形浩生)

 「日本戦争経済史」は日本のことが書いてありました。そこで、アメリカのことが書いてあるという「戦争の経済学」も読んでみました。

 こちらは、経済学の入門書として、大学の講義の副読本としても使えるような構成で書かれています。例えば、各章の最後に要点のまとめ、その章のキーワード、設問があります。難しそうな話ですが平易な言葉で書かれており、わかりやすかったです。

 

 第一部は、アメリカの失業者が言った「アメリカ経済のためにも、ここらでガツンと戦争を!」という言葉から始まっています。戦争が起こると景気が良くなるという意味のようです。それは本当か?ということ書かれています。日本でも第一次大戦の時は成金が増えました。また、アメリカも第一次、第二次大戦で国土が戦場にならなかったので、アメリカ人の中にはそう考えている人がいるようです。特に教育水準が低い人ほど。戦場になったヨーロッパではそんなことを言う人はいないでしょうね。

 第一部は、経済が良くなる場合と悪くなる場合の条件に付いて考察しています。

 

 第二部は、軍隊をベースに書かれています。軍事支出だけではなく、徴兵制と志願制での違いや、兵器産業についても考察されています。F-16戦闘機やAK-47の値段についても書いてありました。これらの兵器は数多くつくられ、あちこちに拡散していますので、サンプルとして見ると面白いようです。

 

 第三部は、安全保障の値段について書いてあります。平和な方がいいに決まっていますが、ではなぜ戦争、内戦、テロ、大量破壊兵器の拡散が起こるのか。経済学的視点から考察しています。

 

 具体的な事例をコラムで紹介しながら、図表を沢山使っていますのでわかりやすいです。まあ、図表の文字がちょっと小さいですが。

 

 その他、訳者の山形氏が一章設けています。日本のイラク派兵はペイするのかどうか考察してます。この本の出版は2007年なので、ちょうどトレンドだったのでしょう。