都会風

 ニュースで、福井県池田町で移住する人や移住してきた人に向けた七か条の提言というものを、地区長さん達が作って広報に載せたと言っていました。これがどうも「高圧的」とか「上から目線」とか言われて物議を醸し出しているようです。特に「品定め」とか「都会風を吹かさないで」とか言う表現がよくなかったようです。

 私も読んでみました。確かに表現は稚拙ですね。まあ、地区長さんと言えば多分高齢でお偉い人でしょうから上から目線になったり、こういった文書を作る経験がないでしょうから表現が稚拙になるのは仕方がないでしょう。

 

 この中で気になったのは、「都会風を吹かす」という事です。ニュースのコメンテーターも「それ何?」と言っていました。具体的な内容が書いていないのです。何故か?これは田舎者が都会に対して「漠然」と持つ劣等感がベースにあるのです。都会者は別に意図的に都会風を吹かしていなくても、劣等感を持つ人は都会者の行動がいちいち都会風を吹かしているように思えてしまうのです。これは都会、田舎とかには関係ありません。人間の心理です。ドラマとかでも劣等感から悪の道に突き進むという悪役はいくらでも出てきます。なので、具体的な「都会風を吹かした」行動という事例を出せないのです。移住してきた人は困ってしまいますよね。自分がどう行動すればいいのかわからないのですから。具体例があれば直すことができるでしょうけれど。

 

 また、もう一つ「濃い人間関係」という言葉も気になりました。多分都会の薄い人間関係に対して優越感を持てることなのだと思います。が、人間関係の濃淡とは相対的なものです。濃すぎると組織は固まりますが、排他的になりやすいものです。また、不祥事の隠蔽や組織ぐるみの犯罪を犯したりするようになります。内部告発しようにも村八分になるのでできません。企業なら内部告発した人に対する保護が法律で決まっていますが、村社会では保護されません。いい例が熊本の漁協が起こしたアサリの産地偽装事件です。アレは犯罪だと認識した人がいても、それを口に出すことができなかったのでしょう。そんなわけで、濃い人間関係は必ずしも良い事ではないのです。

 

 今回の件、地区長さん達は、自分達だけで決めずに、もっと広く、特に移住してきた人の意見も聞くべきだったのです。まあ、そういった濃い人間関係を持つ閉鎖的な風土が田舎風を吹かしているという事でしょうか。