三方一両損

 長兄がおごるというので、四兄弟が鰻を食べに行きました。長兄は体が大きいのでうな重2人前、他の兄弟は1人前を頼みました。長兄は自分の1人前分のうな重のふたを開け、中の鰻を四等分して一切れずつ弟たちに分けました。そして言いました。

 「これぞ四方四分の一損だ」

 次兄がそれは何故かと問います。長兄は、

 「もし、俺とお前が二人で鰻を食べに来たら、1人前の半分をお前にあげただろう。が、お前が受け取ったのは四分の一だ。その他の弟たちも同じだ。それぞれ四分の一ずつ損をしている。俺がお前たちの誰かと来ていれば、あげたのは半分だったが、皆で来たので四分の三をあげてしまった。四分の一を損している。皆が皆、四分の一ずつ損しているのだ。」

 弟たちはなるほとうなずいたのでした。

 

 これは落語や講談で有名な大岡裁きの一つ「三方一両損」のパクリですが、四分の一でもできるなと思ったのでした。

 ところで、この「三方一両損」の精神は、現代日本でも、もっと広まるべきではないかと思ったのです。みんなが得をする「Win-Win」というのはめったにありません。大体誰かが損したりします。人間は、自分の損は我慢できるが、他人の得は我慢できない、と何かで読んだ気がします。でも「三方一両損」の「Lose-Lose」の精神が(あるいはそう思える精神が)あれば、誰かを羨んだりすることはないのではないかと思います。そういった事件が結構多いですから。京アニとか小田急通り魔とか。