tenkatoitsu(HEXASIM/国際通信社)の作品は、戦国日本の合戦をフランス人がデザインしたという点でも特異ですが、そのわかりにくさはよく耳にします。このtenkatoitsuシステムの問題点と発展的意見について述べたいと思います。わかりにくいのは下記の4点が原因ではないかと考えています(個人の意見です)。
①チットシステム
強制行動チットとは別にある軍勢チットの役割が不明瞭と思います。
従来のチットシステムに慣れている方は、軍勢チットがメインで強制行動チットはいわゆるロンメルチットのような万能チットと把握してしまっているのではないでしょうか。私の考えでは、攻勢行動チットがメインの行動システムで、軍勢チットは追加移動、追加戦闘、命令変更等を行う補助チットなのです。
軍勢チットをメインの行動システムととらえてしまうと、1ターンにおける使用可能な数の少なさに目が行ってしまうでしょう。あまり動けないのにターンが終わってしまう印象があるかと思われます。
②強烈なコマンドコントロール制限
命令ルールによって、ユニットの行動が決められているところが、何かルールによってやらされている感があると感じる方もいるでしょう。プレイヤーはあまり自由に移動や戦闘を行えません。例えば、一番近い敵に向かって移動しなければならないとか、軍勢はまとまっていないとならないとかルールで規定されています。
これは、プレイヤーの立場が総大将であり、配下の軍勢を手足のように動かせるような立場にないためと思います。当時の軍勢は、総大将が自由に扱える自身の配下と、それ以上の数の与力(つまり他家の部隊)の寄せ集めでした。他家の部隊は、お味方の勝利は当然必要とはいえ、自家の功績をあげることに血道をあげていましたので、必ずしも総大将の命令に従わないことがありました。
このように、プレイヤーの立場から見ると、統制の取りずらい(コマンドコントロールが発揮しにくい)状況だったと思います。なので、プレイヤーの自由意思以外(端的に言ってルール)を各軍勢の行動に影響を与える必要があったのでしょう。
③戦闘陣形
これはそもそも「陣形」という名称がよくないです。「陣形」と言いつつ、中身は5つの行動の集合体です。別に「鶴翼」の「戦闘陣形」を選んでも、鶴翼に広がって配置する必要はありません。このあたり、フランス人が日本の戦いのイメージ作りのために入れたような気がします(「忍者」のルールもありますし)。
また、詳しく分析していませんが、戦闘陣形になんとなく有利不利がある気がします。具体的には行動の数ですね。
それと、記録しておくのが面倒です。
④ルールの構成
これは一番言いたいところです。実際、聞いた話ではルールを把握するのが難しかったというものもあります。
ルールは、移動→強制行動(移動や戦闘)→軍勢(移動や戦闘)→命令→戦闘陣形→戦闘の順に小分けされて書かれています。
しかし、7章の「行動ターンにおける強制行動フェイズ」の所に移動や戦闘の話が出てきます。また8章の「軍勢フェイズ」の所にも移動や戦闘の話が出てきます。しかもこの8勝の話と7章の話は同じです。そして、それぞれの移動については、その前の6章「移動とスタック」に、戦闘については11章「戦闘」に書かれていて、非常に参照しにくい。
また、戦闘の前に戦闘陣形の章がありますが、③にも書いた通り、戦闘陣形は行動集なので(移動や戦闘の例外事項)この位置にあると混乱の元になります。
ちなみに、ASLSKの射撃ルールも、私のような初心者には参照しにくいです。たくさんの種類の「○○射撃」があるうえ、ルールのあちこちに分散しています。
以上の問題点については、ルールの構成を見直したうえで「デザイナーズノート」などを適宜ルールに挟み込むなどすればよかったのではないかと思います。
否定的な意見ばかりではつまらないので、以下に発展性について述べます。
・どんな戦いが面白いか(システムに会っているか)
・長久手→秀吉方がちょっとストレス
・関ケ原→スケールが異なる(少し小縮尺)
上記の2つは既にゲームに入っています。
・川中島→武田方が以下略。でも、後半は増援がある。
・姉川→結構均衡していて面白いかも
・桶狭間→やはり奇襲だが、織田方が小数なのでバランスが取れるか。あるいは、迂回奇襲、強襲など、いろんな説のシナリオを入れる。
・長篠→馬防柵の効果がわかる
・三方ヶ原→大軍勢の方が待ち受ける形なので、ちょっとバランスがとりにくいか
・城攻め(短期間のものが少ない)
・天王寺→攻撃的な小軍勢と動きが緩慢な大軍勢なので面白いかも(みんな大好き天王寺)
戦国期にとらわれる必要がないですが、鉄砲のルールがありますので戦国・幕末期が一番でしょうか(弓矢で代用可能かもしれません)。
その他、・・・
大部隊と小部隊でのコマンドコントロールの違いが出せないか→桶狭間や天王寺で今川、徳川の大部隊と動きやすい信長、真田の小部隊の違いが出せる
現状では距離による遅延のみが大部隊と小部隊のコマンドコントロールを分けている。
ナポレオンの命令戦法と連合軍の訓練戦法の違いを出せないか→グルーシィに追撃命令を与えたら、それのみに行動が支配されるなど。
日本陸軍の硬直性や、戦闘機などの無線の発達の遅れなどを表現できないか→コマンドコントロールの取りにくさが表現できるかもしれない。
ちょっと煩雑ですが、片方が命令チットシステム、もう片方が別のシステムにするなどで、違いが出せるかもしれません。