「船の食事の歴史物語」(サイモン・スポルディング)

 前に「鉄道の食事の歴史物語」で書いた「旅の食事」シリーズ3作のうちの1作。読み終わりました。「鉄道の食事の歴史物語」は本文の中にレシピを入れていましたが、こちらは巻末にレシピをまとめています。鉄道の方は、概ね豪華食堂車の豪華料理のレシピばかりでしたが。まあ、そりゃ駅弁のレシピとか書かないよね。

 船のレシピとか言うと豪華客船(タイタニックとかクイーンエリザベスとか)の料理のレシピ集の様な気がしますが、そんなことはありません。そもそも、船の食事なんてひどいものだったのです。レモンなどの柑橘系が壊血病に聞くとわかるまでは、10人に1人が壊血病で死んだとか。長期間の航海の場合は食糧難になることも良くあったようです。

 で、レシピを見てみると、「船底ネズミのブーゲンビル風」とか「海鳥のシチュー」とかあります。詳しいレシピは「遠洋航海の船員のためのクック夫人のレシピ集―ゆでクラゲ、アホウドリのシチュー、その他のごちそう」という本を見てくれと書いてありました。基本的に「やけくそのレシピ」だとか。とはいえ、ネズミは壊血病にも効くようです。ブーゲンビル風のブーゲンビルというのは山本五十六が戦死した島の事ではなく、フランス人のルイ・アントワーヌ・ド・ブーゲンビルという人の事のようです。普仏戦争時にはパリでネズミが高額取引されたとか。

 飲み物ではグロッグのネルソン提督風とか、ジャングルジュースとかがありました。グロッグはラムの水割りです。トラファルガーの際に戦死したネルソン提督の遺体をラム酒の樽に詰めて保存したという言い伝えかららしいのですが、実際にはブランデーの樽だったそうです。ジャングルジュースというのは太平洋戦争時にアメリカ軍の水兵や海兵や陸兵が作ったアルコール度数の高い酒の事らしいです。どこの軍隊も酒を造るなあ。「雑兵物語」でも貰った白米を酒に変える話が出てきますし、三笠が沈んだのも水兵がアルコールから酒を造ろうとして火事を起こしたせいだ言う話もあります。消毒用アルコールに火をつけて、少しアルコールを飛ばすと飲みやすくなるそうです。

 残りの「空と宇宙と食事の歴史物語」をこの後読んでみます。どちらも「歴史」というほど歴史はないでしょうけれど。