「モルトケからシュリーフェンへ 近現代ドイツ軍事思想論集」(小堤盾)

 この本は、著者が数年かけて講演等をした論文を集めたもののようです。なので、「モルトケからシュリーフェンへ」というタイトルの様にモルトケとシュリーフェンだけを扱っているわけではありません。

 内容は、モルトケとシュリーフェンの軍事思想の変遷はもちろんありますが、それ以外に、デルブリュックの思想、戦間期の思想(フライターク、ルーデンドルフ)、第一次大戦中の総力戦、クラウゼヴィッツの評価の変遷、そして珍しいドイツ空軍の黎明期の話が載っています。

 シュリーフェンに関しては、有名なシュリーフェンプランの是非には特に踏み込んでいず、何故そう言ったプランができたのか、また戦後のシュリーフェン神話の形成について書かれています。

 デルブリュックについては、戦略論体系シリーズの中で著者が書いているようです。このシリーズは、第1巻から買っていたと思いますが、どこまで買ったんだっけ。デルブリュックって読んだっけ。まあ、デルブリュックって、結局は戦略家ではなかったなぁという感じがしました。理屈倒れのシュターデン。

 総力戦に関しては、第三最高統帥部が軍部独裁に走っていく経過が書かれていて、なんか、日本の太平洋戦争期を見るようでした。軍部独裁って、ダメダメだな。

 ドイツ空軍については、何故戦略空軍ではなく戦術空軍になったかが考察されています。ま、結局はヒトラーが陸軍思考だったからですかねぇ。海が怖かったんでしょう。

 様々なテーマが混然と掲載されていますが、私の様にあちこちかじるのが好きな人にはちょうど良い感じでした。なかなか面白かった。