新書版の同人誌です。全2冊は面白かったので、今回も買ってみました。
同人誌なので、研究書ほど厳密にとは思っていませんが、今回は時間が無かったのか、考察が足りない所があるなぁと思ったのでした。
帝国に空軍はありませんでしたが、この本では、陸軍航空隊と海軍航空隊をまとめて論じています。これは著者の思惑通りで、帝国としての空軍力を検証するためです。とはいえ、組織としては別なので、別々に記述している個所もあります。
考察が足りていないなと思ったのは、1942年から1945年までの日本の航空機生産数について書かれている所です。生産数38,905機と書いてありますが、グラフの値と倍近く合いません・・・。まあ、それはそれとして、4万機近い生産に対し、終戦時には12,170機残っていたと書いてあります。著者は生産した機体の内、2/3しか使っていないと書いています。そして、それは幾度か行われた「決戦」に対して、本当に注力していなかったのだと結論付けています。
おかしい。
まずもって、生産数だけを分母にしている所がおかしい。1942年までに保有していた機体があるはずで、それがどれぐらいかわからないけど、例えば12,000機あったとしたら、生産した機体はすべて使っていることになります。
さらに、著者は「決戦」で使用した機体数についても書いてあります。ミッドウェー、マリアナ、レイテ沖、沖縄の4つです。で、ミッドウェー参加機体数は288機、沖縄は約7800機であり、戦争後半になって、ようやく戦力集中できるようになったと書いてあります。ミッドウェーでは「生産数」のわずか1%だと。
おかしい。
ミッドウェー当時の保有機数を分母にするならともかく、ミッドウェー当時は保有していなかった機体の数を分母に含めるのは間違っていると思います。分母にするなら、ミッドウェー当時に保有していた機体数でなくては。
また、沖縄戦でようやく戦力集中できるようになったというのもオカシイ。いくら国内に機体があっても、ミッドウェーまで持っていく手段が無ければ、作戦参加機体数が増えるはずもない。沖縄は本土に近いから、輸送する手間が無いので増えるのが当たり前です。
その他、特攻についても書いてあります。飽和攻撃という意味では特攻は合理的な戦法だと言っています。これもどうだろうか。人情の話ではありません。特攻は一人が命をかけて行いますので、二度目はありません。確かに一回は飽和攻撃を行えるかもしれませんが、それで終わり。長期的に見て「合理的」と言える戦法ではないと思います。
以上のように、今回の本は考察がちょっと足りないかな。まあ同人ですから、あまり責め立てるつもりもありません。