「プトレマイオス一世」(イアン・ウォーシントン)

 古代エジプト最後の王朝となったプトレマイオス朝(有名なクレオパトラが最後の王)の創始者プトレマイオス一世の伝記と研究書です。プトレマイオスは、アレクサンドロス大王の朋友として東征に参加し、大王の死後にエジプトの統治を任されました。その後、ディアドコイ戦争を生き延び、天寿を全うしました。さらに有名なのは、「アレクサンドロス大王伝」を執筆したことです。これは、後にアリアノスが参照して、その断片が残されています。

 一方、その人物評価はあまり芳しくなく、安彦先生がマンガ「アレクサンドロス」を書こうとした時に、語り部に選ぼうと思ったが「なんとなく感じられる小利口さが彼に感情移入させてくれなかった」と書かれています。安彦先生は「アレクサンドロスアムロ・レイに似ている」と言っていますが、そういう意味ではプトレマイオスカイ・シデンに似ているかもしれません。また、マケドニアに輸送中のアレクサンドロスの遺体を途中で強奪してエジプトに持ち帰ったあたりも、小利口さを感じる原因かもしれません。

 また、アニメ「アレクサンダー戦記」でも、アレクサンドロスによる粛清が続く中、恐怖におびえてアレクサンドロスを暗殺しようとして失敗し、その場から逃げ出すという、なんとなく明智光秀っぽさがあるように描かれています。

 そんなイメージを持っていたのですが、この本を読んで、我慢強く機会を待つ辺り「徳川家康っぽい」と思ったのでした。よくアレクサンドロス織田信長に例えたりしていますが、そういう意味でもプトレマイオス徳川家康に見立てるのは合っているかも。いや、本当に面白い本でした。