「上杉謙信の本音」(池享)

 「上杉謙信の本音」と書いてありますし、帯にも「関東支配へのこだわり、負け惜しみ、責任転嫁、大言壮語・・・書状が伝える生の声 見えてくる心の内」と書いてあります。しかし、本の半分は謙信以前の東国争乱で、後ろの方は謙信以後の秀吉による北条征伐まで書かれていて、全体としては室町中期から戦国終盤までの東国争乱の概略史と言った感じです。あとがきにも、謙信の書状解析は老後の楽しみと書いてありました。まあ、本のタイトルは、内容とあまり合っていません。でも、謙信が書かれている部分には、いくつか書状に触れられています。ま、概略を現代語訳しただけなので、研究書とはいいがたいですが。

 今後に期待か。

 それでも東国争乱を3つの期間に分けているのは、分かりやすいです。最初は享徳の乱から長享の乱まで。この間は、まだ室町体制が残っていました。続いて北条の勃興から河越合戦まで。室町体制の崩壊期です。最後は戦国大名たちの領土争奪から秀吉による北条征伐まで。上杉謙信は、この最後の段階の人です。そう思えば、謙信についての言及が少ないのも納得か?