「ナチズム前夜」(原田晶博)

 興味ある時代・場所の一つに、ワイマール共和国があります。とはいえ、今まで体系的に本を読んだことはありません。なので、なぜヒトラーが出てきたのか、という点については、国民もヒトラー(とナチス党)はよくないと思っていたが、他の連中がダメすぎたので、仕方がなくヒトラーを選んだ、という感じでしか思っていませんでした。

 今回、この本を見つけたので読んでみたのです。第一次大戦敗戦からヒトラーが政権奪取してヒンデンブルクが死ぬ辺りまでの包括的な政治の流れと、それに伴って発生していた政治的暴力について書かれています。政治的暴力とは、国家権力の暴力ではなく、またSAやSSだけの話ではありません。

 ワイマール共和国期を大きく3つにわけて論じています。最初は共和国前期で、敗戦からミュンヘン一揆まで。この期は、共和国vs反共和国の左右翼勢力という構図です。クーデター騒ぎが頻発しています。ヒトラーミュンヘン一揆だけが例外ではありませんでした。

 次が安定期で、この時は党派の対立での暴力が行われています。最初は共産党vs右翼政党でしたが、次第に共産党vsナチス党に二極されていきます。この時の政治的暴力は街頭での乱闘とかで、回数は多いが死傷者は少なく、国民も政治的暴力に慣れてきてしまいます。

 最後がヒトラーが政権を取った後。ナチス党が他の政党を駆逐するために、国家権力(警察)を手に入れて国家的テロが頻発します。

 政治の流れが分かると、私が持っていたイメージは、ちょっと表層的過ぎるなと思ったのでした。確かに世界恐慌はドイツに打撃を与えましたが、それ以前から共和国=議会制民主主義は崩壊に向かっていたのでした。ヒンデンブルクの大統領権力が強化された時点で、独裁制の道が開いていたようです。

 それにしても、似たような名前の政党名が多くて、政治の混乱より先に私の頭の中が混乱します。民主党社会民主党は別もの。同様に国民党、国家国民党、バイエルン国民党・・・。ナチス党というのが名称だけ見ればわかりやすい。日本も同じような感じですが、政党名にセンスがなさすぎですね。まあ、名前負けしている政党もありますが。N国とか、新規さがない維新とか。今時流行らない共産とか。