この本は、2013年に出版されたもので、当時の最新の知見をもとに書かれています。副題に書かれている様に、歴史、文学、考古学の3つの視点それぞれに章を当てています。一般読者に分かりやすい入門用ではありますが、結構詳しく書かれています。「歴史」とは、ヒッタイト帝国の首都から発掘された文書(粘土板)を元にしており、「文学」はホメロスの叙事詩「イリアス」、「オデッセイア」に「叙事詩の環」と呼ばれる一連のトロイア戦争物の文学作品について解説がされています。「考古学」は、トロイア遺跡とされているヒサルルック遺跡の発掘の歴史と何相にもなっている遺跡の中から、特にホメロスのトロイア戦争と推定されている相について書かれています。この部分を読んで、シュリーマンって結構な山師だなと持ったのでした。人間的に信頼できないとか。まあ、偉人と言われている人って、そういうところありますよね。
また、訳者も結構詳しいようで、補助的に解説を入れています。なので、いつもは和訳した人の名前をタイトルに入れませんが、今回は入れています。共著と言わないまでも、結構近い所があると思ったのです。
現在、ホメロスのトロイア戦争が本当にあったのかどうかについてはまだ結論が出ていません。そもそも、いくつもの戦争についてをまとめて1つの物語にしたのかもしれないと書かれていて、そうだったのかと思ったのでした。トロイアがあった場所はダーダネルス海峡の南岸で、人の行き来の多い所です。ヒッタイト帝国と、ギリシア王国との「境目」であるため、紛争が絶えなかったとか。
ヒッタイト文書は解読が始まったばかりで、まだまだ未解読の文書もあるようです。これらがトロイアについていろいろと書いてあれば、さらにトロイアの歴史が分かってくることでしょう。まあ、私の生きているうちには無理かもしれませんが。