海はよぉぉぉ、海はよぉぉっ
『海皇紀』という川原正敏のマンガがあります。この人は『修羅の門』や『修羅の刻』という格闘マンガや『修羅の刻』や『龍師の翼』という歴史マンガを描いています。『海皇紀』は、帆船時代で大砲がない時代(途中で大砲が出てくる)の「2000年後」の地球を舞台にしています。主人公は「海の一族」という海洋民族の一人で、「影船」と呼ばれる世界に8隻しかない帆船の艦長です。ですので、帆船同士の戦いが行われるのですが(一部ガレー船とも戦っています)、この描写がすごく精密です。それもそのはず、作者は商船学校で帆船を動かしていたということです。
そんなわけで、このマンガが好きな私は、帆船の戦いに興味がありました。現在手に入る帆船のウォーゲームといえば『Flying Colors』(GMT)があります。これはまあ大砲が出てきて撃ちまくるゲームですが。それに艦隊の運用がメインですので、個艦同士の戦いではありません。Duelというシステムで個艦同士の戦いをシミュレートするモジュールもあるようですが、未入手です。
最近、同じデザイナーのMike Nagelの『Captain's Sea』がLegion Wargamesから出たので入手しました。これぞ、私が求めていたもの。敵味方1隻ずつ持って決闘するゲームです。やったぁ!
まあ、似たようなゲームに『Sails of Glory』がありますが、こちらはミニチュアを使ってプレイしますので、結構広い場所が必要です。持ってますが・・・。
さて、船長の海(Captain's Sea)の紹介です。
副題にある通り、1799年から1815年のアメリカ、イギリス、フランスのフリゲート艦の戦いをシミュレートするものです。シナリオもトラファルガーとか有名なものはありません。1隻1シートのステータスシートが付いていて、そこで損害や大砲の状況、乗組員のモラルなどを記録します。マップはスクエアグリッドですが方向は8方向になります。辺を越えての移動は2移動力、頂点を越えての移動は3移動力必要ですので、一応1:1.414の割合に近くなっています。
特徴的なのは「相対移動システム」という移動方法で、風向きに対して同じ方向に進んでいたら双方の移動力0(+賽の目による追加移動力)となり、マップ上では動かしません。これは海上なら確かにその通りで、陸上では「動かない地形に対して」相対的になりますが、何もない海上では「動いている他の船」に対して相対的になります。まあ、細かいことを言えば、海底地形(浅瀬とか)や鳴門の渦潮の様な「地形」がありますので、それをゲームに入れるならマップ上で動かす必要が出てきますが。
そんなわけで、個艦同士の戦いなら問題ありませんが、3隻以上の船が参加すると「相対移動システム」は機能しなくなります。でも、Nagelさん、「やってやろうじゃないの!」と複数艦参加システムも作っています。ただし、船を示すユニットはアメリカ、イギリス、フランスの3つしかありませんので、「4隻以上使うなら、追加でゲームを買ってね」とルールに書いています。
その他、フレーバーとしてイベントカードがあります。引いたときに行う強制イベントカードと手に持っていてここぞという時に使うホールドイベントカードがあります。また、このカードを捨てることでダイス修正も行えます。
シナリオ1のセットアップ状態です。シナリオ1は1799年2月9日にカリブ海で行われた米「コンステレーション」と仏「ランシュルジャント」との戦いで、アメリカ海軍が初めて外国海軍を破った戦いです。見ただけで風上にいる米コンステレーションが有利そうです。
操艦表には風向きごとに、どんなマニューバーができるかとそれに必要な移動力が書かれています。操艦ブロックを相手から見えないようにインパルストラックに配置して、該当インパルスになったら公開してユニットを動かします。
このインパルスですが、12インパルスありますが、実際には艦の移動力(相手との相対移動力とダイスによる追加移動力)をベースにして、何インパルス目に行動できるかを決めます。例えば移動力1ならば第12インパルスにしか行動できませんので、第1~11インパルスは飛ばします。一方、順風かつ追加のダイスの眼がよい場合は12移動力となり、12インパルス全部で行動できます。行動とは、操艦や射撃を言います。ですので、移動力が高いと1ターンでたくさんのインパルスで行動できます。標準的な大砲のリロードは6インパルスですので(乗組員の質が高いと)うまくすると1ターンに2度射撃ができます。移動力1ですと第12インパルスにしか行動できませんので、リロードが済んでいても1回しか射撃できません。
さて、両艦の状況です。艦のステータスシートに記録します。クルーポイント数分、索具や帆の操作、大砲の操作、ダメージコントロールなどにクルーを割きます。余ったクルーは白兵戦要員です。戦いが進むにつれ、船体や索具にダメージが積もり、クルーが減っていき、ダメコンができなくなり・・・負のスパイラルです。
さて、第1ターンです。最初にクルーの割り当てを行います。米コンステレーションは右舷側に敵を見ていますので、右舷の大砲やダメコンにクルーを割きます。一方、仏ランシュルジャントは左舷側に敵を見ていますので、左舷にクルーを割きます。
次に主導権をチェックしますが、1d6振りあって大きい方が主導権側です。そして、移動力のチェックでは、両方とも風に対して同じ方向に移動していますので、相対移動力は0になり、ダイスによる追加移動力は両方とも3でした。ですので、第4、8、12インパルスに双方のアクティブカウンターを置きます。他のインパルスは飛ばします。展開が早いです。
第4インパルスで、まず主導権側のコンステレーションがマニューバーを決めます。現在、風は左真横から吹いていますので、ユニットのDと書かれている欄を操艦表で見ます。逆帆(Back Sail)が1移動力、下手回し(Wear)が1移動力、辺を通っての移動が2移動力、頂点を通っての移動が3移動力になります。このどれかを選んで、操艦ブロックを相手に見えないように置きます。例えば辺を通っての移動の場合、2移動力、つまりアクティブカウンターが2つ分(第12インパルス)のところで1マス移動できます。今回は近寄らないとどうしようもないので下手回しを選びました。つまり第8インパルスで(同じマスで)回転できます。ランシュルジャントも同じことを考えましたが、回転方向は逆になります。
そんなわけで、第1ターンが終わった後は、双方少し近づきました。第2ターンでは、コンステレーションは順風ですが、ランシュルジャントは逆風方向になります。このため移動力に差が出ました。特に追加ダイスが走ったので、コンステレーションは11移動力です。やりたい放題です。とはいえ、頂点方向の移動には3移動力かかりますので、1ターンでは3マスしか動けません(4、7、10インパルス、第1インパルスは行動できません)。
さて第3ターンです。だいぶ近づきました。コンステレーションはレーキ(縦射)射撃できます。レーキとは艦首または艦尾方向から艦を貫通するように射撃することで、特に艦尾方向からの射撃ではダメージが大きくなります。
射撃は右舷前方と右舷後方で別々の目標(船体か索具か)の場合は個別に、同じ目標の場合は合わせて同時に解決します。解決には指定の数のダイスを振って基本5以上でヒットします。船体にダメージが嵩んでくると振れるダイスの数が減り、ヒット数も減っていきます。次に防御側がヒットをキャンセルするためにダイスを振り、最終的なヒット数を出します。そしてさらにヒット数と3d6で最終的なダメージ(船体、索具、乗組員)を出します。ちょっと複雑な感じですが、ダイスは攻撃側2回、防御側1回振るだけです。まあ、その後、火災チェックとモラルチェックがありますが。
今回は、レーキにより船体、索具、乗組員のそれぞれに3ダメージ受け、かつモラルチェックに失敗しました。
こんな具合でゲームを進めていきます。両艦が同じマスに入れば接弦戦闘になることもあります。双方が狙わないとなかなか難しいですが。最終的な勝利は、拿捕か、降伏か、ダメージによる勝利得点で決まります。結構サクサク進みますが、拿捕や降伏までは中々いかないかと思いますので、ある程度のダメージがたまったら終了にするのがいいかもしれません。
相手の行動を読みつつ、自艦の位置をどこに持っていくか考えるのが面白いゲームです。ここには書きませんでしたが、上手回しをしようとして失敗し、1ターン丸々行動できなくなるなど帆船のままならなさがよく出ています。風の変化に関するルールはありませんがハウスルールで作るとさらにままならなさが出て面白いかもしれません。