Last Stand Rommel (ボンサイ・ゲームズ)

 BANZAIマガジン11号付録の『Last Stand Rommel』は、タイ・ボンバがデザインした交互手順、衝力攻撃、探見攻撃が特徴のゲームです。マップはA1フルマップですが、カウンターシートは半分で、ユニットは1ステップなので交換ユニットを用いません。このため、かなりシンプルなゲームといえます。上記のシステムを体験するのにいいのではないかと思ってプレイしてみました。

 

①マップがよい

 マップは北イタリアで、ロンメルが主張したイタリア中南部放棄、北部持久戦略をもとにしたWhat if?ものです。ロンメルがノルマンディに行かず北イタリアで指揮したらということですが、ノルマンディでは水際撃滅、北イタリアでは内陸で持久と、かなり言う事が異なっています。まあ、それは置いておいて。

 初期配置はドイツ軍のみで、第1ターンにドイツ軍と連合軍がくんずほぐれつな状態で南端から進入してきます。考えてみると結構過激なシチュエーションです。

 で、初期配置ですが、配置ヘクスがわかりやすいようにヘクス番号に背景色があります。これはありがたい。他のヘクス番号が見にくいので、逆に配置ヘクスを探しやすいです。

 また、南端には米軍、英軍の進入境界線とか勝利条件ヘクスとか使用するチャートとかが書かれており、プレイエイドカードが付いていますがほとんど不要です。

 素晴らしいマップ!

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マップと初期配置(赤丸は勝利条件ヘクス)

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初期配置ヘクスの強調表示

②セットアップしていて残念に思った事

 マップにドイツ軍を配置したら、ターントラックに増援を配置していきます。ターントラックも大きくて増援を置きやすいです。

 で、このゲームは8ターンまでありますが、英軍ユニット3つに増援ターンが「9」と書いてあるものがあります。???「6」のミスプリかと思いましたが、ちゃんと「6」ターンの増援もあります。うーん。もしかして今後バリアント記事が出るのか?よくわからないので、このユニットは仕舞ってしまいました。

(追記)「8」ターンのミスのようです。

 さて、ターンマーカーですが、このゲームでは1回だけ「ロンメル効果」が使えます。このため、「ロンメル効果」を使った後はターンマーカーを裏返すのですが、意匠が同じです。まあ、よくよく見れば裏か表かはわかりますが、どうせならロンメルの画像を抜くとか背景の色を変えるとかして欲しかった。マップはすごくいいのに残念。

 

③第1ターンについて

 ドイツ軍の初期配置ユニット数は19、増援は9で合わせて28手番できます。一方、連合軍は、米軍が8、英軍が15で合わせて23手番。つまりドイツ軍の方が5手番多いことになります。となれば、うまく使えば連合軍ユニットを補給切れ除去も可能です。このゲームではターンの最後にドイツ軍、連合軍の順番で補給線チェックをし、補給切れなら除去(デッドパイル行き)です。

 ちなみに第2ターン以降は連合軍の増援の方が多いため、手番は連合軍の方が多くなります。つまりドイツ軍は指を咥えてみているだけ。ドイツ軍は第1ターンが重要です。

 このゲームはパスが許されていませんので、フェイズの最後の方はユニット数が少ない方が見ているだけになってしまいます。

 話は変わりますが、パスが許されないということは、パスをすることで相手の出方を見るということができないことになります。で、その対策として、あまり重要ではないユニットを作っておいて、パスしたいと思った際にはそのユニットを裏返すというやり方があると思います。この重要ではないユニットって、つまり「予備」ですよね。予備の重要性について、こんな風に解決しているのは面白いと思いました。

 

④CRTについて

 1:2~6:1まであります。地形効果や航空支援はDRMではなく全てコラムシフトです。で、結果を見ると1:2でDRがあり2:1からDEがあります。またAEはありません。なんて攻撃側にやさしいCRTなんでしょうか。どちらの軍も毎ターン2ユニットデッドパイルから補充できますので、どんどん攻撃しても問題なさそうです。この2ユニット戻ってくることを考慮すると、理論的に1:1の攻撃の場合攻撃側が除去されるEX、AL1が出る確率が50%ですので4か所攻撃しても戦力が落ちないということになります(4か所×50%=2ユニット除去→次ターンに補充で戻ってくる)。1:2の場合は3か所です。防御側かつユニット数が少ないドイツ軍は、これを基準に考えるのもよいかと思います。

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CRT

⑤連合軍の上陸侵攻

 第2~4ターンの間に1回だけ行うことができる上陸侵攻。海岸沿いならどこでもOK。勝利条件ヘクスであるヴェネツィアトリエステが海岸沿いにあります。もちろん、この街に直接上陸はできません。ただ、隣接ヘクスが上陸可能海岸です。ドイツ軍がこの街にユニットを置いていた場合は、EZOCに上陸できませんので隣接することができませんが、いない場合は隣接ヘクスに上陸、次のターンの移動フェイズで占領となってしまいます(上陸したターンは移動できません)。

 低戦力ユニットを置いていても安心できません。上陸ターンには2ユニットまで置けますので6攻撃力ユニット2個なら、防御力1(ドイツ軍最低戦力)に対して6:1(CRTの最大比)で都市のコラムシフト2を適用すると4:1になります。DE、EXとDR→EXなので100%落ちます。後は残ったユニットが戦闘後前進で占領できます。防御力3(標準的な歩兵)でも安心できません。CRT2:1でEX以上の確率は2/3あります。

 気を付けていれば大丈夫でしょうが、ドイツ軍はあまり前線に兵力を集中しすぎてはいけないということです。

 

⑥初期のドイツ軍の防衛ライン

 最もヘクス数が少ないラインは20ヘクスです。ここに連合軍を置くようにすれば一番いい配置です。まあ、交互手番ですし、そううまくはいかないでしょうが。

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初期防衛ライン案

⑦衝力攻撃、探見攻撃

 特徴的なシステムです。簡単に言えば、衝力攻撃は勝った勢いに任せてさらに攻撃すること。探見攻撃は、威力偵察かと思います。衝力攻撃は戦闘後前進の結果起こります。一方、探見攻撃は単発でできますし、探見攻撃→衝力攻撃することで離れているユニットも攻撃可能です。また、衝力攻撃の代わりに探見攻撃もできますので、通常攻撃→探見攻撃で敵戦線の奥深くまで進撃することもできます。ただし、探見攻撃はEZOCにいないとできず、EZOCに対してしかできません。

 で、探見攻撃って、何をシミュレートしているのでしょうか。第一次世界大戦終盤の西部戦線なら、浸透攻撃のように、強力な抵抗拠点を迂回する、というのをシミュレートしていると言えそうです。でも第二次大戦ではねぇ。太平洋戦線なら日本軍の浸透と言えるかもしれませんが。

 まあ、シミュレートについてはとにかく、システム的には浸透できるということです。無論、補給については注意する必要があります。さもないと浸透したはいいがターンの終わりに除去されてしまいます。ドイツ軍が先に補給チェックしますので、浸透したドイツ軍が次々に除去されて戦線崩壊とか、目も当てられません。

 ただし、この探見攻撃と衝力攻撃をうまく使うと、敵ユニットを包囲してDRの結果をステップロスに変えることができます。1ステップしかありませんから簡単に言えば除去です。

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探見攻撃からの衝力攻撃の例(うまくいけば)

 なんか長くなってしまいましたので、今日はここまでにしておきます。