司馬史観について

 電子書籍を漁っていたら、司馬史観万歳の本と司馬史観反対の本を見つけました。どちらの側にも人がいるのだなあと思ったのでした。しかも、それで本を書いて飯を食っている。

 私自身は若いころ(中学生)から司馬遼太郎の小説は読んでいて(街道をゆくとかエッセイは読んでいません)、結構ハマっていました。司馬史観は日本人にとっては結構心地いいものですね。

 長じるに従って、いろいろな本を読み、知識が付いて、司馬史観から脱却できました。

 私が思うに(個人の感想です)、司馬遼太郎は自分を殺そうとした昭和という時代を憎むあまり、その前の明治や江戸時代を賛美しているようです。大正時代が抜けているのが笑えますが。

 そんなわけで、『坂の上の雲』という明治万歳な小説を書いたのでしょうが、最後の方では明治もそんなにいい時代じゃないと気が付いたのかトーンが落ちています。多分、最後が「雨の坂」だったのは、誰かが言っていたその後の暗い時代を暗示でいるのではなく、司馬遼太郎が明治に対する感情があまりよくなくなったせいだと思います。

 さて、各本に読者コメントが付いていましたが、その中に「(司馬史観にハマるのは)読んだやつが悪い」といった感じで書いている人がいました。私はそれは違うと思います。読む人がみんな頭がいいわけではありませんので、どうあっても司馬史観にハマる人は出てきます。新興宗教や発明と同じですね。科学者がよく発明した兵器を使うのは使うやつが悪いと言って、自分の発明を擁護しますが(原爆とか)、それは逃げです。発明した人は責任を取らないといけません。自分に言い訳をしてはいけないのです。

 まあ、そんなわけで、私自身はいろいろと考えて司馬史観から抜けることができましたが、司馬史観万歳で本を書くような人はもう手遅れですかね。