コマンドマガジンの関ケ原の記事を少し読んで

 コマンドマガジン日本版(CMJ:国際通信社)の#158の『NEXT ISSUE』では、#159の付録ゲームとなる『関ケ原』(HEXASIM/国際通信社)の紹介記事に、『独特で難解なゲームシステムをよりわかりやすく図解で解説する』とあったので期待していました。『長久手』、『山崎』を通して絶望したゲーマーが戻ってくるようになるのではないかと。

 結論から言えば、「この記事では、絶望した人たちは戻ってこないな。残念だ。」です。

 何が悪いのか。

 このゲームによらず、あるゲームに興味が合ってプレイしてみたいという人にはリプレイ記事は非常に有効です。私自身の経験でいうと、あるゲームを友人とプレイしたのですが、どうも友人たちの反応は微妙でした。このままでしたら、多分もうプレイすることはなかったでしょう。しかし、このゲームにはリプレイ小説があり、これを読ませた結果、現在でもシナリオの相当な数をこなしています(50以上)。まあ、友人たちには多少はゲームの内容に興味があったからだろうと思います。もしなければリプレイ小説を貸しても読まなかったと思います。このように、ゲームに興味が多少でも興味がある人に対してはCMJ#159のリプレイ記事は大変有効だと思います。

 しかし、既に前2作プレイして絶望した人にとっては、『二度あることは三度ある』で、そもそも記事を読まないでしょう。Must Attackの日記を見ても、記事を飛ばしたという人がいるようです。彼らに本当に必要なのはリプレイ記事ではなく、システムについてわかりやすいインスト記事です。彼らから見れば、興味対象としては既にマイナスなのですから。

 また、この記事で問題なのは、『新説の初期配置を使っていること』でもあります。普通のウォーゲーマーなら、関ヶ原の初期配置は概ね知っているのではないかと思います。しかし、「新説」では、これとは全く異なるため、混乱を招くだけでしょう。私が最初にこのセットアップ図を見た時、『山崎の戦い・イブ』のように、西軍が移動して配置につき、次いで東軍がマップに進入してきて着陣するシナリオかと思いました。NHK大河「葵 徳川三代」で関ケ原前夜に暗闇の中を移動する両軍のシーンが頭にあったからです。「新説」では、どうもそうではないらしいです。

 「新説」はリプレイする人にとっては興味深く楽しいものだったでしょうが、絶望した人たちから見れば余計な手間がかかりそうで、記事を読む気すら失われると思います。これでは、絶望した人たちが戻ってきてくれるわけがありません。

 CMJ編集部も、天下統一システムが難解なので、ほとんどプレイされていない状況は把握していると思いますが、ちょっと、これではプレイ人口が増えるとは思えません。

 必要なのは、ゲームが終了するまでのリプレイではなく、1ターンだけでもいいからチットの引きやユニットの移動等を都度々々詳細に図入りで説明したものだと思います。紙面の都合もあるでしょうが、今回の記事に添付されている写真(P.15)では移動がどう行われているかわからないし、添付のテキストも文字が小さくて読みにくいです。ユニットを実際に動かしてみればわかると言われるかもしれませんが、そもそも絶望した人はユニットを切りもしないのではないでしょうか。

 

 私自身は、新しいもの好きで、ウォーゲームの常識といったような固定観念を持たない性格なので、天下統一システムは難解ながらも別に絶望するようなことはありませんでした。実際アドバンスドスコードリーダー(ASL)のスターターキット(SK)のルールの方が量があって覚えるのが大変です。SKですら苦労する私から見れば問題なくASLをやっている人の方がすごい。それなのに、このシリーズが難解だからとあまりプレイされないのは悲しい。

 まあ、実際のところ、『天下統一』シリーズのルールの書き方が非常に悪いというのは以前に指摘した通りです。また、ルール把握のための試しプレイの際に、ルールを参照しにくいのはダメだというのも以前に書いています。CMJ編集部としては、追加のプレイエイドシートを作るだけではなく、ルールの書直しを行ってもよかったのではないかと思うぐらいです。それが不可能なら、記事の中にでも参照しやすい図表類を入れてほしかった。1ページほどルール概要を解説していますが、文字だけでわかるわけもありません。

 せっかく面白いシステムですし、この後も信長ものが発売されるようなのでもったいないなと思う次第です。

 

 まとめるとプレイ人口を増やすためには、

◆ルールを書き直すぐらいの勢いで説明する解説記事が必要

 ルールなんか読まなくてもこの解説記事だけでプレイできるぐらいの勢い

◆1ターンだけでいいので手順をわかりやすく詳細に図示したリプレイ記事が必要

 チットを引いたらこれが出た。なので、この人たちをこう動かしました(矢印で示す)。で、この人たちはこの敵と戦います。等々。これらすべて図示。

 なのだと思います。現状では「三度目の正直」としてプレイしてくれる絶望した人はいるのでしょうか。

 

 そういえば「新説」の元ネタ本は何なのでしょうか。ぜひ読んでみたい。