ASL SK2のシナリオ10はイタリア軍が有利? その1

 アドバンスド・スコードリーダー(ASL)は、規模の小さい(大縮尺の)ゲームなので、どうしても細かなルールが必要になってきます。小縮尺の戦略級ならば、簡略化したルールでも大きな流れを再現できますが、戦術級ではある程度精密に現実を再現しようとするとどうしてもルールが多くなります。もちろん、簡略化することは可能です。その例がテーブルトークRPG個人戦闘だといえるでしょう。

 そんなわけで、長年ASLを避けてきたのですが、先が長くない人生なのでいろんなゲームを楽しもうと、ちょっと手を染めてみようと思いました。とはいえ、ASLです。コマンドマガジンの付録になったアドバンスド・トブルク・システムでも挫折した(ルールブックの途中までしか読まなかった)私ですので、「やっぱスターターキット(SK)からだよね」と始めたのでした。

 

 ASLのSK#2に含まれるシナリオのうち、S10 PAPER ARMYというものがあります。

 私はASLSKを始めたばかりでよくわかっていないせいかと思いますが、このシナリオではイタリア軍が必勝とは言わないまでも結構有利に感じました。ところが、いろいろ聞いてみるとギリシア軍の勝率が70%とか。自分が何らかの落とし穴にハマっているのではないかという気がしました。そこで、ざっくりと展開をまとめてみます。

 なお、これも聞いた話ですが、ASLは小部隊では賽の目に左右されるらしいので、実際にダイスを振って展開を決めていません。

 

 シナリオをご存じない方が見られるかもしれませんので、シナリオをまとめてくださっているサイトを参考にしてください。

http://war.game.coocan.jp/ASL/index.php?Scenarios%2FS%2F10%20Paper%20Army

 戦力はイタリア軍が4個小隊、ギリシア軍が3個小隊+増援1個小隊(2~4ターンの間に賽の目次第で出現)です。

 

 イタリア軍は、3個分隊ずつ指揮官とスタックして4個小隊に分けます。これが、指揮官ボーナス、CX、道路移動ボーナスを使ってひたすら西(マップ左)に走ります。完全分隊が2VP、指揮官と半個分隊が1VPです。10VPのマップ離脱が勝利条件なので、1個小隊(7VP)+αがマップ左端から退出できればイタリア軍が勝利します。

 イタリア軍は、下図のように2個小隊ずつ南北に分かれて移動します。第1ターンはCX、第2ターンはCXなし、第3ターンはCX、第4ターンはCXなしとすると、遅くとも第5ターンには盤外に出られます。シナリオは6ターンまでです。

 

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第1ターン イタリア軍終了時

 イタリア軍の方針としては、ギリシア軍が射程内に入ってきたら撃つ。混乱した分隊は放置。混乱した分隊が自力で回復したら、追いかけてくるか、足止めに使う。

 対するギリシア軍の戦術ですが、ここが大きな問題になります。いくつか考えて試してみましたが、あまり勝率がいい感じがしません。

ギリシア軍もスタックしてCX上等で追いかける→臨機射撃でボコボコにされる

②スタックせずに追いかける→第1ターンはいいが、以降は指揮官とスタックしていない分隊は追いつけない。

③スタックして追いかけるところは同じだが、イタリア軍の射程(完全分隊で4)よりも遠い5へクス距離があるところで止まる(ギリシア軍の射程が5)。

 

 ③を試してみます。

 第1ターンのイタリア軍の移動は、上の図の通りです。

 通常の4MF+2MF(指揮官ボーナス)+2MF(CX)と突撃フェイズの1へクスで移動しています。

 次に第1ターンのギリシア軍の移動です。

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第1ターン ギリシア軍移動フェイズ終了時

 まず、北の方を見ます。

 ギリシア軍はイタリア軍分隊の射程内にいないので、イタリア軍が臨機射撃できるのはLMG(2-5)のみです。CX射撃の+1とFFMOの-1が相殺するので、火力2では28%の確率でNMC以上の結果になります。また、PTCの結果になる確率は3%です。

 臨機射撃が当たった場合、8-1指揮官と7-0指揮官ではMCの結果が変わります。上図ではわからなくて申し訳ありませんが、8-1指揮官の下には3個完全分隊+LMGが、7-0指揮官には1個完全分隊と3個半個分隊がいます。追撃をかわす目的なら8-1指揮官の方を狙うかと思います。また、7-0指揮官の下にいる半個分隊は射程が3で届きませんので、撃ち減らしてもあまり意味がありません。ここでは8-1指揮官のスタックに対し臨機射撃したとします。

 臨機射撃が当たった場合(28%)、確率的に8-1指揮官はNMCでは28%×17%で混乱し(出目9以上)、4-5-7分隊は28%×28%で混乱します(出目8以上)。3個分隊いますが、確率的には0.23個分隊が混乱(28%×28%×3)なので、多分臨機射撃の効果はないでしょう。厳密にいえば1MCとかありますので、もう少し厳しい確率になるかと思います。なお、PTC(3%)の方は同様の計算をしても殆ど可能性がありません。ただし、PINが出ますと突撃フェイズに移動できなくなるため、次のイタリア軍の移動フェイズに臨機射撃する際にギリシア軍に少し厳しい結果になります。

 

 一方、南側の方ですが、臨機射撃可能なイタリア軍は南にいる方の小隊です。この小隊もLMGを持っています。ギリシア軍は8-0指揮官なので、確率が少し変わります。しかし、同じ計算をしても0.35個分隊が混乱するのみなので、こちらも効果がないでしょう。

 

 臨機射撃をしてしまったので、防御射撃はありません。

 次にギリシア軍の前進射撃です。

 北の方は射撃グループを形成できますので、火力が4個分隊分16FP+LMG2FPです。IFTの欄は16FPです。ダイス補正はありません。ダイス10以下でNMC以上になります(92%)。PINにしても意味がありませんのでPTCは無視しています。イタリア軍の指揮官は全て-0なので補正はありません。8-0指揮官と3-4-7分隊は92%×28%(指揮官)および92%×42%(分隊)の確率でMCに失敗します。指揮官は26%の確率で混乱しますが、分隊の方は38%×3=1.15なので、結果として3個分隊中1個分隊は混乱になります。

 

 南の方は、林のTEM+1がありますので、少し変わります。なお指揮官は7-0指揮官です。8-0にしてもよかったかもしれませんが、こちらは林によってLOSがさえぎられて第2ターン以降に射撃されませんので、この配置にしました。

 ギリシア軍のFPは3個分隊12FP+LMG2FPです。IFTは12FPの欄になります。9以下でNMC以上の結果になりますが、林のTEMがあるので、出目は8以下で結果が出ます(72%)。

 上記と同様の計算をすると、0.90個分隊が混乱する可能性があります。1個分隊に届かないので、混乱はなしです。

 

 以上の結果から、イタリア軍北方小隊から1分隊混乱したユニットが出ました。1分隊ユニットを裏返し、DMを付けます。

 

 ところで、このシナリオの場合、イタリア軍のDMによる潰走は「西に向かって」行うということでよいのでしょうか。勝利条件のマップ端に近づいてしまいます。まかり間違って回復してしまったら、むしろイタリア軍に有利になるのではないでしょうか。かといって、背景を考えると東に潰走するのもおかしい気がします。

 

 潰走フェイズが終わりギリシア軍の突撃フェイズを経て、下図のようになりました。DMを食らったイタリア軍分隊は一番近い林に逃げ込みます。

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第1ターン ギリシア軍終了時

 長くなってきましたので、第2ターン以降は次回に。